2016年2月5日金曜日

ポートランドのZineカルチャーを支えるIPRC&Reading Frenzyレポ

今回も、取材同行による濃いめのネタでございます。

ポートランドについて書かれたZine

「Zine(ジン)」。日本でも横文字のまま表記されることが多く、同人誌や自主制作誌というよりも、アートでお洒落でクリエイティブなニュアンスが感じられる、個人が好きに、通常それほど多くない部数で作る紙媒体です。

私の中では、すぐ北東ブラジルの素朴な小冊子「コルデウ(cordel)」が浮かぶのですが・・・


SPFW、Amapoのショーで配られた「コルデウ」風冊子
まあ、だからなんだ、というわけでもありません。はい。

DIY精神の根付いたポートランドでは、もちろんZine作りが盛んです。独立系の有名書店「パウエルズ」なんかでも販売しています。

SEポートランドにあるIPRC

この度、世界で2番目*の所蔵数のジン・ライブラリーを持つという「インディペンデント・パブリッシング・リソース・センター(Independent Publishing Resource Center; IPRC )」の Co-Director、A.M. O'Malleyさんに、センター内を案内してもらいました。(*1番目は、フランスにあるそうです)

腕にびっしりタトゥー&赤い靴から、パンクな感じの方かと思いきや、「最近『ねこあつめ』にはまっているの〜♡」とお茶目な面も・・・

「日本の伝統的ポーズ」をとるA.M.さん
NPO団体が運営するIPRCは、会費を払うことで、誰もがここにある活版印刷、スクリーンプリント、製本機などのリソースを使って、自由に印刷物を制作できる場所です。

ここは、出版物の自主制作を志す若い作家やアーティストがお互い学びあったり、助け合ったり、機材やスペースを共用したりできる場所が必要だという思いから、本屋を経営していたChloe Eudalyさんと、活版印刷を学んだアーティスト、Rebecca Gilbertさんによって1998年に創立されました。
クロエさんの本屋の上階の小さな共用スタジオで生まれたIPRCは、現在、ヴェルモント通りの大きなスペースへと移り、製本やスクリーンプリントもできるようになりました。

広いセンター内
なので、Zineはもちろん、例えば、結婚式の招待状や、ポスターなども作ることができます。ちなみにここで結婚式を挙げたカップルもいるんだとか・・・。

活版印刷用のブロック
もちろんZineでも、ノンフィクション、フィクション、コミック、日記、詩、ビジュアルアートなど分野も様々で、形や大きさも自由です。

見せてもらったフランスのアーティストが作ったというアートな冊子は、やたらおしゃれです。

フランスのアーティストがセンターで作った作品群

A.M.さんのお気に入りは、どんどん開くアートなZine
ところで、A.M.さんは、作家で詩人でもあります。
彼女は、ミネソタとかサウス・ダコタとかの辺りの大農場に生まれ育ち、周りに自分が好きなパンクミュージックとかアートとかについて、盛り上がれる人がいなかったことから、自己表現の手段として、Zine作りに目覚めたんだとか。
Zineを通して、同じ趣味や価値観を持つ人とのつながりができ、また、アートやライティングの道へ進むことになったそうです。

A.M.さんがIPRCで制作した"Erasure Poem"のZine

残された単語は、I/yield/to/An unknown clock/an unknown dark, /summer.

彼女が、もし彼女のように、身近にリソースがないけれどZineを作ってみたい、という人におすすめするガイドは、「Stolen Sharpie Revolution」だそうです。これを参考に、「Be willing to experiment and to fail (なんでも試してみて、失敗してみて)」とのこと。

自らが作品を作るだけではなく、作り手のサポートも重視している彼女。IPRCや短大、また刑務所でもクリエイティブ・ライティングを教えているそうです。受刑者の作品をまとめたZineも制作しています。

受刑者の作品をまとめたZine。これから製本作業に入るそうです。
このような社会貢献的な活動も含め、IPRCの運営費用はNPOとして応募する基金や、会費で賄われているそうです。会員は、実際に施設を利用する200人のアクティブメンバーに加え、IPRCの活動に賛同する4000人のサポートメンバーがいるそうです。

ところで、創立者のChloe Eudalyさんは、現在も小規模な独立系出版社や自主制作の本を販売する「リーディング・フレンジー」のオーナーとして活躍しています。一方、Rebecca Gilbertさんは、CD、DVD、レコードのパッケージやポスター、カードなどのデザイン&活版印刷スタジオ「ストンプタウン・プリンターズ」を経営しています。

ポートランドで一番Zineが揃っているお店だと教えてもらったのも「リーディング・フレンジー」です。せっかくなので、向かってみました。
ミシシッピ通りにある「リーディング・フレンジー」
「リーディング・フレンジー」の Zineや雑貨は
一部の方々へのお土産に喜ばれそうです
猫関連グッズがやたら目につく店内・・・
うーん、思った以上におしゃれ!な店でした。自主制作誌もパウエルズのZineコーナーにあるやつより、なんというか、メジャー感があります。キレイに並んでいるからかなあ。まあそれでも、好きなことやっている感は、全開です。

そういえば、さっき「Stolen Sharpie Revolution」のサイトを見ていたら、ポートランドで7月9&10日に「Portland Zine Symposium 2016」が開催されると出ておりました。作品はもとより、個性的な人が多いんだろうなあ・・・。

<追記>
「トラベル・ポートランド」サイトにポートランドのZineが読める特集ページがありましたので、ご紹介します!  Explore all of the Portland Zines



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