2016年2月16日火曜日

Boom Arts募金イベント@Upforギャラリー

先週、友達に誘われて、「ブーム・アーツ(Boom Arts)」のインドをテーマにしたファンドレイザーイベントに行ってきました。ブーム・アーツは、世界のコンテンポラリー・パフォーマーや劇団をポートランドに呼んでくれるプレゼンター&プロデューサー。キュレーションを行うRuth Wikler-Luker嬢は、興行会社が呼ぶのを躊躇するような、かなり挑発的で小規模なパフォーマンスの中から、現代のポートランドの観客の心に響く、普遍的な内容のものを選んでいるんだとか。
私は見ていないのですが、ADRIENNE TRUSCOTT'S ASKING FOR ITとか、かなり話題になったようです。

次回は、3月にリンカーンホールで、インドのデジタル社会を舞台にした「FREE OUTGOING」という作品がかかるということで・・・今回のイベントもインドをテーマにしたものでした。場所は、デジタルメディアを中心としたコンテンポラリーアートギャラリー、UPFOR


なんかの賞をとったというカクテルは、ココナッツミルクとウォッカとキュウリとローズウォーターと・・・といろいろ入ったやつでした。



「FREE OUTGOING」の監督、Snehal Desai氏も来ておりました。やたら話が上手い・・・


そしてインドのダンスパフォーマンス。まずは伝統的なやつ・・・


それから、現代的なやつ。


見たことある!と思ったら、TBAのTen Tiny Dancesに出てた方でした。

そのあと、アートオークションがあって、募金があって・・・という感じ。チャリティーオークションは、酔うと気前がよくなる、という傾向からいろいろ飲ませてくれるそうですが・・・よかった、ガンガン飲みたくなるようなカクテルじゃなくて・・・。

また金曜日、友人に誘われてプレビュー見たPNCA卒業生作品のアートオークションに行くのですが、気をつけないと。別のチャリティーオークションに行った友達は、酔った勢いで、子犬、競り落としましたからね。まあ「信じられない!」と当初は呆れたパートナーと共に、溺愛していますが・・・。

2016年2月5日金曜日

ポートランドのZineカルチャーを支えるIPRC&Reading Frenzyレポ

今回も、取材同行による濃いめのネタでございます。

ポートランドについて書かれたZine

「Zine(ジン)」。日本でも横文字のまま表記されることが多く、同人誌や自主制作誌というよりも、アートでお洒落でクリエイティブなニュアンスが感じられる、個人が好きに、通常それほど多くない部数で作る紙媒体です。

私の中では、すぐ北東ブラジルの素朴な小冊子「コルデウ(cordel)」が浮かぶのですが・・・


SPFW、Amapoのショーで配られた「コルデウ」風冊子
まあ、だからなんだ、というわけでもありません。はい。

DIY精神の根付いたポートランドでは、もちろんZine作りが盛んです。独立系の有名書店「パウエルズ」なんかでも販売しています。

SEポートランドにあるIPRC

この度、世界で2番目*の所蔵数のジン・ライブラリーを持つという「インディペンデント・パブリッシング・リソース・センター(Independent Publishing Resource Center; IPRC )」の Co-Director、A.M. O'Malleyさんに、センター内を案内してもらいました。(*1番目は、フランスにあるそうです)

腕にびっしりタトゥー&赤い靴から、パンクな感じの方かと思いきや、「最近『ねこあつめ』にはまっているの〜♡」とお茶目な面も・・・

「日本の伝統的ポーズ」をとるA.M.さん
NPO団体が運営するIPRCは、会費を払うことで、誰もがここにある活版印刷、スクリーンプリント、製本機などのリソースを使って、自由に印刷物を制作できる場所です。

ここは、出版物の自主制作を志す若い作家やアーティストがお互い学びあったり、助け合ったり、機材やスペースを共用したりできる場所が必要だという思いから、本屋を経営していたChloe Eudalyさんと、活版印刷を学んだアーティスト、Rebecca Gilbertさんによって1998年に創立されました。
クロエさんの本屋の上階の小さな共用スタジオで生まれたIPRCは、現在、ヴェルモント通りの大きなスペースへと移り、製本やスクリーンプリントもできるようになりました。

広いセンター内
なので、Zineはもちろん、例えば、結婚式の招待状や、ポスターなども作ることができます。ちなみにここで結婚式を挙げたカップルもいるんだとか・・・。

活版印刷用のブロック
もちろんZineでも、ノンフィクション、フィクション、コミック、日記、詩、ビジュアルアートなど分野も様々で、形や大きさも自由です。

見せてもらったフランスのアーティストが作ったというアートな冊子は、やたらおしゃれです。

フランスのアーティストがセンターで作った作品群

A.M.さんのお気に入りは、どんどん開くアートなZine
ところで、A.M.さんは、作家で詩人でもあります。
彼女は、ミネソタとかサウス・ダコタとかの辺りの大農場に生まれ育ち、周りに自分が好きなパンクミュージックとかアートとかについて、盛り上がれる人がいなかったことから、自己表現の手段として、Zine作りに目覚めたんだとか。
Zineを通して、同じ趣味や価値観を持つ人とのつながりができ、また、アートやライティングの道へ進むことになったそうです。

A.M.さんがIPRCで制作した"Erasure Poem"のZine

残された単語は、I/yield/to/An unknown clock/an unknown dark, /summer.

彼女が、もし彼女のように、身近にリソースがないけれどZineを作ってみたい、という人におすすめするガイドは、「Stolen Sharpie Revolution」だそうです。これを参考に、「Be willing to experiment and to fail (なんでも試してみて、失敗してみて)」とのこと。

自らが作品を作るだけではなく、作り手のサポートも重視している彼女。IPRCや短大、また刑務所でもクリエイティブ・ライティングを教えているそうです。受刑者の作品をまとめたZineも制作しています。

受刑者の作品をまとめたZine。これから製本作業に入るそうです。
このような社会貢献的な活動も含め、IPRCの運営費用はNPOとして応募する基金や、会費で賄われているそうです。会員は、実際に施設を利用する200人のアクティブメンバーに加え、IPRCの活動に賛同する4000人のサポートメンバーがいるそうです。

ところで、創立者のChloe Eudalyさんは、現在も小規模な独立系出版社や自主制作の本を販売する「リーディング・フレンジー」のオーナーとして活躍しています。一方、Rebecca Gilbertさんは、CD、DVD、レコードのパッケージやポスター、カードなどのデザイン&活版印刷スタジオ「ストンプタウン・プリンターズ」を経営しています。

ポートランドで一番Zineが揃っているお店だと教えてもらったのも「リーディング・フレンジー」です。せっかくなので、向かってみました。
ミシシッピ通りにある「リーディング・フレンジー」
「リーディング・フレンジー」の Zineや雑貨は
一部の方々へのお土産に喜ばれそうです
猫関連グッズがやたら目につく店内・・・
うーん、思った以上におしゃれ!な店でした。自主制作誌もパウエルズのZineコーナーにあるやつより、なんというか、メジャー感があります。キレイに並んでいるからかなあ。まあそれでも、好きなことやっている感は、全開です。

そういえば、さっき「Stolen Sharpie Revolution」のサイトを見ていたら、ポートランドで7月9&10日に「Portland Zine Symposium 2016」が開催されると出ておりました。作品はもとより、個性的な人が多いんだろうなあ・・・。

<追記>
「トラベル・ポートランド」サイトにポートランドのZineが読める特集ページがありましたので、ご紹介します!  Explore all of the Portland Zines



2016年2月3日水曜日

ナイキの広告も手がける広告代理店、ワイデン+ケネディ本社潜入レポ

ワイデン&ケネディ本社ビル入り口
ワイデン・アンド・ケネディ(Wieden+Kennedy)といえば、広告業界で名を馳せるクリエイティブ・エージェンシー。ポートランドのパール地区に本社がございます。

席を置いて仕事をしていたJWTサンパウロを去る際には、多くの同僚から「ポートランド住むなら、ぜーったいワイデンに入るべきだよ!」と言われましたが、まあ、みんなに一目置かれる、そんな簡単に入れるエージェンシーではございません。

クライアントのナイキさんも使うという
社内にあるバスケットコート

今回、その、えらいかっこいい本社内部を見学する機会がありましたので、ご紹介します。

ワイデン+ケネディは、ダン・ワイデン氏とデビッド・ケネディ氏が、労働組合ホールの地下に置かれたカードテーブルで、ナイキから借りたタイプライターと公衆電話だけで創業したという伝説がありますが・・・いやいや、元冷蔵倉庫というパール地区のでかいビルを改装+最上階を建て増しした、巨大な本社でございます。600人が働いているそうです。

創立者を描いた絵画

入り口を入ると、広いホールに社員の写真、それからビーバーが目に止まります。

ビーバーのアートと社員の写真
広いホールは、毎月第一木曜日に開催されるアート・ウォーク時に、一般に公開されます。ちょうど明日ですね!2月は、盆栽がいろいろ並ぶ予定だそうです。

社員写真は「人が財産」という考え方から、トロフィーの代わりに飾っているんだそうです。・・・エミーとかカンヌとか広告賞を大量に受賞している代理店だからこそ、かっこいいセリフですね。受賞歴がないと、負け惜しみに聞こえちゃいますから。
ちなみに、2年以上働くと、好きなアイテムを持って臨める30分の写真セッションがあって、そこから社長だったかな?がベストなやつを選び、壁に入れるんだそうです。

そして、8フィート(約2.4m)の木製ビーバーですが・・・、ワイデン+ケネディ社内には、大量のアート作品が飾られています。順にいくつか紹介しますね。

"Fail Harder" Wall 
こちら、10万本以上のプッシュピンで「Fail Harder」の文字を描いた作品(2004)。「もっと激しく失敗しろよ」的な意味ですが、これは、ワイデン+ケネディのワイデンイズムと呼ばれる会社方針(マントラ)の1つ。

よーく見ると、透明の中に赤が1本
ちなみに、よーく見ると、透明ピンの中に1本だけ赤いプッシュピンが混じっています。これは、「完璧を目指すあまり、遊び心を忘れるようなことがあっちゃダメ」というような意味だとか。

もう1つ、会社のマントラになっているのが、「The Work Comes First」というライン。これは、「仕事優先」と言うよりも、「作っているもののことを一番に考えろ」といった感じの訳になります。つまり、良いものを作るためには、クライアントもクリエイターも、プロジェクト関係者全てが、政治やエゴなどを脇に置いて、作ろうとしているものが、本当に良いものか?という点に集中するべきだ、といった意味です。

「金の無駄だと思うけど、上の意向に逆らうわけにはなあ」とか「商品はさておき、オレが作ったこれはイケてる」なーんて言ってたら、良いものはできません、ということですね。

"The Work Comes First" interactive wall

なんか、壁の前に倒れた影がありますが・・・これは、まさか政治力無視して討ち死にした人ってことは・・・ないですね。

ちなみにこの作品、ホームセンターなんかで買えるもので、ワイデン+ケネディ社員が手作りしたんだとか。大変、ポートランドらしいクリエイティブだという気がします。





続いては、会社の中央にあるホールへ参ります。


建物の真ん中にあるアトリウム
スタジアムのように社員全員が集まって座れる「エージェンシーの心臓」とも呼べるエリアです。月1のミーティングやレクチャー、それにパーティーなんかも行われるそうです。6階まで吹き抜けで、広い!

高いトーテムポールも楽々収まります
余談ですが、トーテムポールと言えば・・・昨日、アメリカン・インディアン・カレッジ・ファンドの新キャンンペーンのラウンチがあったそうです。

とにかく広々としたスペースですが、上を見上げると・・・

梁にもアートがとまっています

天井には「巣」が!

この巣、実はミーティングルームになっているのです。

6階まで来ると巣の中に入れます。
案内してくれたPRのレベッカさんとリーマさん
2006年にアーティストPatrick Doughertyによって作られたこの「巣」は、ポートランド近隣の森で拾った柳などの枝を材料にしているそうです。「すばらしいアイディアはここで産み落とされ、孵る」んだとか。

これ、どっかで見たなあ・・・と思っていたのですが、やっぱりポートランドの「子ども博物館」の屋外エリアでした。巣で考える体験をしたい方、出かけてみてはいかがでしょう?

Big Mister Twister @ Portland Children's Museum

他にも、隣り合わせにこんな作品も。

「かいじゅうたちのいるところ」のモーリス・センダックが亡くなった際のトリビュートが、インハウス・広告学校W+K12によって最初に描かれ、ルー・リードが亡くなった時には、隣に彼へのトリビュートが追加されたそうです。

こちらは、ルー・リード氏が登場する1985年のホンダのスクーターTVCM。




それから・・・最後は地下!



2006年の創立祭に招かれたブルックリンベースのアーティスト、Patrick McNeil とPatrick Miller主催の「FAILE」とエージェンシーが共作した3作品が飾られています。
大きすぎて、駐車場にあるのよ、とのことですが、かえっていい雰囲気だと思います。

それに、地下には、小さな印刷所も・・・


この時は、バレンタインカードを手作りしていました。



お客さんに配るだけではなく、販売も行っているんだとか。興味がある人は、こちらから購入できます。

それにしても、オフィスって通常パソコンとかが並んでいるものですが、人が手を動かして作った!って感じの作品があちこちにあって、ジムとかカフェとか仕事以外のためのスペースもよく見える場所にあって(さすがに仮眠室は隔離されてましたが)、金曜だからとのことですが、会議室でパーティーしてたり、子供が遊んでいたり・・・と、まあ、自由な感じがしましたよ。

ここで働けたら自慢だなあ、と思える、とても素敵なオフィスでした。

【関連ポスト】

white bird - La Compagnie Herve Koubi


「ホワイトバード」のダンスシリーズの一環で、フランスのダンスカンパニー、エルヴェ・コウビ(La Compagnie Herve Koubi)の舞台をPSUのリンカーンホールに見に行きました。

なんと、後で一緒に行こう!と言いだした友人が、チケットが売り切れて買えなかったほどの人気っぷり。
なかなか素敵なアートワークが、リンカーンホールの天井に

演目は、「Ce que le jour doit à la nuit(WHAT THE DAY OWES TO THE NIGHT)」。アルジェリア系フランス人の演出家、エルヴェ・コウビ氏が、自らのルーツであるアルジェリアにインスピレーションを求めた作品で、12人のアルジェリア系フランス人とアフリカ人男性が、東方主義の絵(ドラクロワの「アルジェの女たち」とかですかね)やイスラム建築の石の透かし細工のイメージを、カポエラや武道、アーバンダンスなどの動きで表現するというもの。

東洋的な音楽に、カポエラとかブレークダンスの動きなんかを合わせるのは、新鮮でした。それと、オーバースカート付きのパンツの動きがきれいで、衣装も良かったと思います。




インターバル無しの70分。なかなかの迫力でした。ほんと、よく動けるなあ、と思って。いやはや。

2016年2月2日火曜日

ポートランドの街づくりノウハウを輸出する、PDC山崎さんにお話を伺いました

オールドタウンにある歴史的建造物(1908年) に入る
ポートランド市開発局(PDC)

ポートランドといえば、「全米で最も住みたい都市」だと評価される街づくりが有名です。
日本からも、ポートランドの街を体験したい、学びたい、という人々が多く視察に訪れています。そんな視察団が、まずお話を聞きたい!と思うのが、ポートランド 市開発局(PDC - Portland Development Commission)の国際事業開発オフィサー、山崎満広さん。


先日、「環境未来都市構想推進国際フォーラム in ポートランド」のご準備でお忙しい中、某取材に同行してお話を聴く機会がありましたので、こちらに共有いたします。

PDCの山崎さん。100年以上前に作られたレンガの前で。

山崎さんは、茨城県の工業高校を卒業。日立製作所の工場ラインで仕事に就くも、冴えない中年リーダーに将来の自分の姿を見たようで、「俺はこのままここで埋もれてはいけない」と一念発起。夢の国連職員に近づこうと、留学を目指し、お金を貯めます。そして、「ESLプログラムの学費が一番安かった」という理由で選んだミシシッピ州の大学に留学し、必死に勉強。メキシコでスペイン語やマヤ文明まで学び、3年半で学部を卒業しました。

その後、懇意にしていた教授に、経済開発専攻の大学院を勧められると、「夢だった国連と同様の仕事を、国内を舞台にできるかもしれない」と進学を決意。卒業後は、大手ゼネコンや財団に就職し、主に日本企業の誘致を担当。国内外を飛び回っての営業で、大きなお金を動かし、キーパーソンとの交渉や、土地開発、街づくりの経験を積んでいきます。

ところが、3年半ほど経つと、腎臓肝臓を酷使し続けるのはいかがなものか?サボテンまで枯らしてしまうほど家を空けるのは、ヤバイだろう・・・との思いも胸を過ぎり始めます。

毎日家にいるのに枯らしちゃうこともありますけど・・・
この子は今年購入した二代目。

そんな矢先、リーマンショックが起き、アメリカでは新しい方向性として、再生可能エネルギー技術に脚光が集まりました。日本で工業高校を卒業していた山崎さんは、再生可能エネルギーの知識があったため、多くのプロジェクトでひっぱりだこ。その時、ポートランドにも足を運んだそうです。

2008年頃のアメリカでは、再生可能エネルギーを取り入れて街づくりしている都市としてニューヨーク、ボストン、シアトル、オースティン、ポートランドが挙がり、山崎さんも各都市に足を運びました。特に規模が小さいのにいつも名前の挙がるポートランドには、興味を持っていたそうです。そして、実際に訪れて話を聞くと、他の都市との考え方の違いに驚きました。

通常、街づくりは、産業誘致や経済開発を念頭に、再生可能エネルギー技術を用いたりするらしいのですが、ポートランドでは、「産業誘致なんて古い!80年代にやったわよ。経済は後から付いてくるものよ。一番大切なのは、人の力。まず考えるべきことは、住人の幸せ!」だと。

PDCにあるポートランドの経済開発の図

南部のゼネコン、政府系経済開発機構、コンサル事務所を経験してきた山崎さんは、こんな産業誘致否定+ラブ&ピースな話を聞かされ、相当ショックを受けたと思われます。そして、ここがスゴイなぁ、と思うのですが、ポートランドの街づくりについて勉強したそうです。
で、これからはポートランドの街づくりかも・・・と思い、その頃、努力の末に獲得したばかりのすげえでかい額のプロジェクトを蹴って、給料も大したことない(ご本人談)ポートランド 市開発局へと転職したそうです。今でこそ、世界の価値観もポートランドと合致し、大注目となっていますが・・・。

さて、テキサスといえば自動車ですが、ポートランドは、公共交通機関や自転車の街。PDCに就職した頃の自己紹介中、上司に「ごめんなさい、私は車通勤なの」と謝られ、ポートランド住民の意識にショックを受けたそうです。
面白いと思ったのは、このポートランド住民の意識が、街づくりの成功に寄与しているというお話です。山崎さん曰く、自然が好きで、サステナブルな生活を重んじる住民が多いからこそ、環境先進都市になる舵きりができたと。

わたくし、ポートランドは60年代以降、いつまで経ってもヒッピーが去らない街だと思っていましたが、

ポートランドのサタデーマーケットブース

山崎さんによると、ポートランド住民の気質ができたのは、街の誕生当初まで遡るそうです。
というのも、ポートランドを作ったのは、東海岸の街での窮屈な生活に見切りをつけ、半年かけて西海岸を目指し、カリフォルニアのゴールドラッシュの誘惑にのらずに、オレゴンで林業、漁業、農業などに精を出した、野心と独立心がありながらも、やんちゃなだけではなく、真面目な人々というわけです。あと、東海岸より200年ほど後にできた新しい街だからこそ、古いものを重んじる傾向があるんだとか。なるほど。

オレゴントレイルの最終地点だと言われるウィラメット・フォールズ

で、70年代、造船や鉄道の産業が発展し、米国最悪の空気と水質にまで至ってしまった際にも、住民全体で自然と共存する道を選べたんだというわけです。
もちろん今も、そんなポートランドの考え方に共感する人が、移り住んで来たりしているのですが、そうじゃない人々も、ポートランドの街に住むことで、自転車通勤アリだな、とか、リサイクルしないとヤバイな、とか、地産地消サイコー、とかいうふうに、意識が変わっていくんだそうです。
また、だからこそ、LEED認証基準の建物を建てることがマストだったり、都市開発境界線を守る、といったことが大事だったりするわけです。

LEEDプラチナ認証のZGF建築事務所の入るビル

山崎さんは、現在、"We Build Green Cities"と題して、ポートランドの街づくりソリューションの輸出を行っています。それは、次世代につながる街づくりのコンセプトや方向づけのノウハウだったり、実際に街を運営していくための手法だったりします。
街の賑わいや楽しみ、人との繋がりといったソフト面を、道路や建物、公園といったハードに変換できる仕組みや、ソフトから考えた街の姿を描ける人材は、ポートランドが培ってきた資産なのです。

日本の街づくりは、官が道を引いて、デベロッパーが道沿いに箱を立てて・・・と通常プロセスと共に担当者が変わっていくものらしいですが、ポートランド流は、市民、デベロッパー(民官企業)、行政、公共機関(病院や学校、財団など)などが、最初から一緒になって街づくりをしていきます。空き地があれば、どのように道を通せばよいか、建物はどんな形がいいか、など、多くの人々の意見を取り入れながら、ベストな形を探ります。もちろん、さまざまな立場にある関係者の利害関係を調整したり、資金を調達したりと広い視野をもってまとめあげるのは相当大変そうですが、そこを担ってきたのがPDCというわけです。

街づくりを考える際に理解するべきだという
変化の速さを記した図

日本では、千葉県の柏の葉や、和歌山県の有田川町でポートランド流の街づくりプロジェクトが始まっています。
お忙しい山崎さんですが、1年ごとに予算が・・・人事異動が・・・というのではなく、誰もが暮らしやすい街ができるまでやめない!と肚を括ったプロジェクトチームの依頼は、大歓迎!だそうですよ。

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